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濡れた夜を歩いて溶け出した緑を吸い込んでいたら,鼻腔から黒が抜けて内在する青が湧き出てきた.途端に最近聞こえなかった青の静謐な妙音が聞こえてきて,久しぶりに自分の形を思い出した.
もっと頻繁に青を五感したいと思ったが切掛は何だろうか.薫りなのか鳴りなのか光りなのかはわからないので彩がてら青に添えていこうと思った.

弱者を弱者たらしめる弱点は弱者が弱者であるがゆえに受け入れられることがない

弱者を弱者たらしめる弱点は弱者が弱者であるがゆえに受け入れられることがない.そのまま死ぬか弱い部分を殺すかしかない.自分が弱者でなかったならば受けなかった屈辱も自分が弱者であれば屈辱に思える出来事も全て自分に起因する.決して悟られないように噛み切るくらいに強く唇を噛む.決して癒えない渇きのように眩く眼を晴らす.そのような感情がもよく知る他人ぐらいの重なりぐらいにまで薄まってきていたのだが,ふと鏡の向こう側からの景色を覗く機会があって鏡の向こうで投げかけた言葉が私と像との間で共振してしまい,異なる組成の絶望へと相転移してしまった.揺れたことで澱が浮かび上がってきたと言える.夏だからなのかもしれない,梅雨の残りのウォーターマークと形容するのがふさわしい気もするから.少し前に無根拠な自信で自分すらも偽ってバイアスを除いて無自覚に生き続けて振り返ることでしか自己肯定はできないのだと偉そうに高説垂れたが並大抵の自信ではたどり着けないようだ.なんらかの外的な自信供給源が必要な気がするがそれは決して他人からの慰めではないということはわかる.内からの湧き出しを誘発するようなものを探している.強弱とは無縁な何かを探し当てたい.しかしウォーターマークだとすれば拭おうと藻掻いた上で拭ったつもりでも暗視野で見ればすぐさまわかる傷が入ってしまう.サイコロを180度回転させただけのような行為に過ぎない.臨界乾燥はあまりにも苦しそうではないか?一方で澱だったならば何をもってして漉せるのだろう.湧き出す何かでは薄まらない?泉からカロ酸なり王水でも汲みだせば良いのだろうか.痛みを伴って越えた先にある境地こそが痛みを感じないという強さなのだろうか.

夏様様

オタクらしく冬がずっと好きだと思っていたのだが,ここ2年くらいから夏がとても好きになってきた.ただし,陽を受けて燦めく葉に魅せられることはあれど,決して自分の中身が燦々と輝く健全性を纏い始めたわけではない.かつては身に刺さる寒さに心地よさを覚えていた気がするが,もう恋しいとまでは動いていかない.装いの重厚さは好きであったが,布団に直にくるまるときの軽やかさも愛しくなってきた.かつて夏が厭わしかったのは制服を着て長ったらしい坂を登ったり,炎天に砂と埃の混じった汗を流したりすることを強いられたからに違いない.そういうものから離れてやっと今呪いも解けてきたように思える.もう自分を規定しようとしてくる均一的な集団に囲まれることは2度とないところまで来れてよかった.なにかの先入観に基づいた嗜好から離脱できてきている気がする.内面の変化に付随しているのか猫が寄ってくるようになってきた気がする.このまま自我を失ってもいい気がする.どうして冬に固執していたのかというと中二病に罹患していただけな気がしないだろうか,そういえば校則の許す限りの期間まで長袖を着ていたことを思い出してきた.今となっては回り道でしかなくて彼らの気持ちを推し量れること以外にあの日々に意味はない.推し量ったところで何にもならないのだが.辛い経験をした人間への慰めとして人の痛みがわかってよかったなどという戯言が通用してしまうことについては延々と文句を垂れたいのでまたいつか書くことにして.何か書きたいと思うのだが義務に追われて思考が途切れがちになって書く意味を見失いがちである.といってもここの意味は自分で決めるものだけれども.夏の夜にゆったりと風と言葉を織り交ぜることは美しいので,意味のないものを押し切れるようになりたい.感情の抽象クラスのようなものの流れを残しておくことこそが過去を辿る目的に合致する手段な気がしてきた.未来の自分に自分の季節を感じてもらいたい.

象形の差異

持ちが悪い.腹はすぐに減るし,服にすぐ飽くし,傘は易く置いてきてしまうし,そして何より人間関係の消滅が早い.環境を移してなお持続する関係がない.地元に未練がない.かねてより消しゴムのごとく使い潰すものに似ていると思って生きてきた.自分の地と擦れ合って消えていくもの.思い出を使い回すことはあっても,新しい記憶をこれ以上重ねることはできない.空間上で束の間に交差したのは遥か昔の話で今は別の点にあるから噛み合わない. 好きだった女にどうしようもなかった時に好きだったミュージシャンが歌った,君の形と僕の形,重ねてはみ出したものをわかり合うことをきっと愛とか恋というはずなのに,という言葉は今の私が諳んじれるほどに刻み込まれた一節になっている.これがふと最近再び去来して,消しゴムのようにすり潰れるというよりは,ぶつかり合うなかで浮き彫りになっていく自己の形というものが,あまりにも噛み合わないことが露呈してしまっていただけなのではないかと考えるようになった.もうそのミュージシャンの歌を聞く気にはならないのに,形についての観念だけは彼らが今更に塗り替えてしまった

無題

無装飾な生乾きの文章になってしまって申し訳ない.
10連休のうちの6日くらいを全く研究のことを考えないいわゆる休暇として使用した.思えば研究室配属以後は盆と年末の細切れの休暇を享受するのみで,黄金休暇の時期は書類に追われてろくに休めなかった.いつしか年末や盆も曖昧になってきていたここ1, 2年にきて逆接的に休日を満喫するに至った.とりあえず満たしたかった睡眠欲のために遮光カーテンを閉め切って眠ったのだが夢で研究にうなされる日が続いてしまった.なかなかに業深い.どうにか今朝だけは解放されたのだが残念ながらまた明日から否応無く昼からうなされる.
さて,10連休のうちの6日くらいはずっとやりたいと思っていた言語をやることになった.というのも入門書がこれ見よがしというタイミングで発売されたのでこれは天啓だろうと思ったからだ.研究に費やした前半の夜々にちまちまと仕込んだ食事を食いつぶしながら一日中を共にした.よく読めた.人と話さず答えのないものに悩むことなく簡単に手がとどく範囲の動径を伸ばせたと思う.集中して何かに打ち込めることはとても良くて,普段の研究もこれくらいの純度で打ち込めれば楽なのだがどうしても付随する人間関係がどうにもそれを妨げるのだ.twitterに呟くくらいがちょうど良い.関係しているといっても研究は独りの世界なのだから.今では体感している.これをできるのは世界で今の所俺だけだし俺にしか見えていない本質があるのだと.それゆえ解決に向かう方針も全部自分で決めきらなければならない.

食事において油が好きで好きで仕方ないのだなということを自覚し始めた.塩で肉から旨味を引き出しておいて,野菜を付け合わせて引くくらいのオリーブオイルと種々のハーブで彩るのも好きだし,芋類とバターを合わせるのもたまらない.思考回路が肥満なのだろうと思う.

内面からの薫りが外へ漏れ出て美しくてたまらない人間を観察しているとああこれは俺には足りないものだなと思ってしまった.これについてはまた飾り立てて誤魔化して書こうと計画している.最近は本当にくだらなくて見る価値がないと自分でも痛感するような文章しか書けていない.何か湧き出るものがあると思っていたのだが思ったよりも浅薄な中身なのだなとやはり思う.

感覚を介するときの窓枠の存在が急に気になってきて枠の陰になった場所を覗き込みたくなっている.世界にもっと足を踏み入れて全てに言葉を追いつかせたい.したり顔の自分の愚かさを許せない.底知れない野望を見据えるが故に謙虚な人間のように,全てを知った上で尽くすのが良い.

連絡先を知る今は他人となってしまった人間の一覧を眺めていると漂ってくる自分の残り香に中てられてしまった.自我がなかったな,で片付けておきたい未熟さが熟したバナナが放つくらいのむせ返る匂いで鼻を刺す.あの時に想像していた未来とは掛離れた場所に立っていて,自身の形象すら全く異なる.何にせよ今は自分の思考に馴染んだ形を纏えているように思う.体の端まで全てについて説明がつけられるような感じがする. 相も変わらず大衆への忌避感は増して行くけれども,そんなことを微塵も感じさせないように演じてインターネットでの印象を裏切ることを楽しめる.一切の淀みがないような澄ました顔をして笑った写真を残せる.何も考えず部屋を片付けるような感覚で連絡先も片付けた.脱皮して行くように過去を全て捨てて何もなかったように笑うのが良さそうだ.そもそも今日いやに感傷的に連絡先を眺めるに至った理由すら忘れてしまおう.